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インサイドストーリー

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インサイドストーリーでは、弊社がお世話になっているクライアントやベンダー、スタッフなどの素顔に迫った情報を定期的にご紹介させていただいております。

パエリアは奥が深いんです。 もう30年以上、ハマってます。

パエリアダイニング ポコ・ロコ/オーナーシェフ 友井 康之さん

パエリアダイニング ポコ・ロコ
茨城県つくば市竹園1-9-2 デイズタウン1階

「いままで食べたパエリアの中でいちばんおいしい」「職人こだわりのパエリアは本国の一級品クラス」。ネットに絶賛のコメントが並び、口コミサイトでも好評価のポコ・ロコさん。店舗は、ショッピングセンターの一階、隣は中古パソコン店と、本格的スペイン料理店としては意外な場所にありますが、オーナーシェフの友井さんのお話も、立地に負けない意外性でいっぱいでした。

内装も少しずつ、自分の手で、「理想の店」に仕上げていきます。

スペイン料理店なのに沖縄風の瓦屋根やシーサーがあって…個性的な内装ですね?
佐藤
沖縄のコーヒーチェーンだった店舗を居ぬきで使っています。もともとがイタリアンで、次がコーヒーチェーン、その次がグリル料理店という経緯を経た店舗で、その度に改装されたようです。もはやなんだかわからない内装ですが、少しずつDIYで手を入れようと思っています。理想的な内装にするには大規模改装しかありませんが、ビル自体が古いので、いつ建て替えなどで契約解除になるかもわかりません。できるところまではDIYで頑張ります。
友井
ご出身は神奈川県の横浜市ですね。料理の道へ進むきっかけは?
佐藤
横浜の中心地で生まれ育ったので、近くに世界各国のおいしい料理を出す店がたくさんありました。父も食べることが大好きで、イタリアン、フレンチ、中華、タイ料理、ドイツ料理、ロシア料理、ギリシア料理、そしてスペイン料理と、いろいろな店に連れていってくれました。子供心に、料理人の格好良さにも憧れていましたね。堺正章さん主演の『天皇の料理番』というドラマでは、料理が国家の存亡まで左右することが描かれていました。柳生博さんがナレーションを務めていた『すばらしい味の世界』というミニ番組でも、一流シェフの手さばきに惚れ惚れしていました。
友井
子供の頃から料理人をめざしていたのですか?
佐藤
それが、大学まで料理人になる気はまったくなかったんです。高校を卒業して、まわりに流されるように大学に入って、将来は銀行員にでもなるんだろうなと思っていました。そうしてふらふらした学生生活の中でふと、「青春の記念碑」みたいなものがやりたくなったんですね。大学2年の時、自転車で日本一周をしました。自転車でまわると日本は広く、達成感もありましたが、終わってみれば、記憶に残っているのは道路ばかり。それじゃあつまらないなと思って、大学3年になる春休みに西ヨーロッパ自転車縦断の旅に出ました。
友井

自転車で西ヨーロッパを放浪。スペインで、バルにハマる。

すごい行動力ですね。でも、スペインは南ヨーロッパですよね?
佐藤
当初はドイツからのルートを予定していましたが、最初に降りたフランクフルトは最高気温マイナス7度。道路は一面氷で自転車もこげませんし、野宿でもしたら死んでしまいます。そこで列車で雪のないところまで南下することにして、ピレネー山脈を越えて、結局マドリッドまで行く羽目になりました。そこから予定とは逆のルートから縦断しようと決めたものの、今度は自転車がなかなか前へ進みません。スペインは樹木が少なく、荒涼とした赤レンガ色の大地が広がっていて、とにかく風が強いんです。毎日必死にこぐだけではまた、旅の想い出が「道路だけ」になってしまいます。「距離や目的はもうどうでもいい。せっかくヨーロッパに来たのだから、いろいろ見たい!いろいろ食べたい!」とスペインの街を楽しむことにしました。
友井
「文化」として、スペイン料理に興味を持ったのですか?
佐藤
スペインは1日5食。街のあちこちにバルがあって、いろいろなバルをはしごして、少しずつ飲んで、少しずつ食べてまわるという文化があります。自転車でゆっくり旅をしているので、観光客が寄らないディープな店で、現地の人と田舎料理を飲み食いすることができました。これがとても楽しくて、「日本にバルの文化を紹介できたらいいな と思いました。スペイン料理に完全にハマりましたね。到着日ドイツに雪がなかったら、ドイツ料理にハマっていたかもしれません(笑)。
友井
帰国して大学を卒業後、料理の道へ進まれたのですか?
佐藤
「大学に行ってる場合じゃない!」と、帰国後すぐに退学して、横浜の老舗スペイン料理店『カサ・デ・フジモリ』に弟子入りしました。ここで10年修行しましたが、料理を覚えただけでなく、魅力的な人とたくさん出会えたのが大きな財産になっていますね。社長は、スペインが好きすぎて、大学のスペイン語学科を卒業後、まだ日本人がほとんどいないスペインに自分の店を出していました。社長の仲間で、日本に生ハムが輸入できない時代に自分で工場を建てて生ハムを流通させた人や、スペインで旅行会社を立ち上げた人もいました。スペイン好きには、情熱的で面白い人が多いですね。そうした人たちのパイプを活かして、私もスペインの店で何度か研修させてもらいました。
友井

勢いで独立。ライバルは、水族館とジェットコースター。

そして、独立されたのですか?修業した店で上をめざす選択肢もありますよね?
佐藤
日本にバルの文化を紹介したいというのがもともとの動機でしたので、30歳になる前あたりから独立を考えていました。そして32歳で独立。八景島シーパラダイスに店を出しました。1店舗分の空きが出て、父が施設内で雑貨店を経営していた縁で紹介いただいたのですが、いろいろな料理店に敬遠されていたんですね、理由は後でわかりましたが…その時は何も考えず、「誰かレストランやらない?」と声をかけられて、「はい!私やります」と即答していました。
友井
湘南・逗子でスペイン料理、ロケーション的にも最高でおしゃれですね?
佐藤
逗子は一軒家のレストランで、料理はもちろん、内装から食器までこだわっていました。場所柄、元東京都知事やサッカー日本代表の監督、大企業の会長さんなどの著名人もお見えになり、経営も順調でした。でも、15年もすると改装や厨房機器の入れ替えが必要になります。ずっと一緒に働いてくれていた妻も体力的に限界と言うので、店を畳んで、妻の実家がある茨城県の下妻へ引っ越すことを考えていました。そうしたらたまたま、義父が取締役を務めている『ビアスパークしもつま』からオファーをいただいたんです。そこで洋食部門の料理長に就任。施設内ホテルのメインダイニングをスペイン料理店としてオープンしました。
友井

逗子から、下妻・つくばへ。8年ぶりに「自分の店」を持つ。

なぜ、下妻からつくばへ?
佐藤
『ビアスパークしもつま』では4年ほど続けていましたが、2015年の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊して施設が水没し、レストランも閉鎖されました。(※施設は2016年に営業再開)。その間は、同社経営の道の駅でヘルプ要員をして、スペイン料理からは遠ざかっていたのですが、つくば市内のとあるイタリア料理屋が店を閉めてしまうという噂を聞き、イタリア料理屋を経営している社長に押しかけてシェフをやらせていただくことになりました。結果的につくばでは、Biviつくば店とつくばセンタービル店の2店舗でシェフを任されました。
友井
そして今の店へ?
佐藤
つくばセンタービルでは4年くらいやって、評判も上々でした。でも、もう少し広い場所で、自分の好きなようにやってみたくなったことと、自分の店を出すのは年齢的にも最後になるだろうと考え、テナントが全店舗契約更新になるタイミングで独立しました。つくばに決めたのは、人口規模や東京まで40分前後の始発駅という立地が、逗子に似ていたからです。慣れ親しんだ逗子にイメージの近いつくばで、8年ぶりに自分の店を開くことにしました。
友井
今、ホールにいらっしゃる女性と一緒に独立されたのですか?
佐藤
彼女は、茨城に来てからずっと一緒にやってくれているお弟子ちゃんです。今の店も彼女と一緒に探しました。ちなみに、厨房にある包丁も、ずっと一緒。中学生の時に父からプレゼントされたものです。研ぎ続けて使っているので、だいぶ短くなりました。
友井

スペイン料理には、シェリー酒がおすすめですよ。

いいお話ですね。そろそろ、パエリアのお話もしていただきましょう(笑)。
佐藤
パエリアは、お米を味わう料理です。米にはこだわっています。以前はササニシキを使用していたのですが、ササニシキが手に入りにくくなって、何度も何度も、いろいろな米でパエリアを焼いて、今の米に落ち着きました。30年以上パエリアをつくっていますが、今でも毎日、出来上がりが楽しみですし、「もっともっと美味しくできるはずだ」とも悩んでいます。パエリアは本当に奥が深いんです。
友井
ワインにもこだわっているのですか?
佐藤
ワインはスペイン産で揃えています。でも、ワインよりも、スペイン料理にはシェリー酒をおススメしたいですね。当店でスペイン王室御用達の『スレタ』を始め3種類のシェリー酒を置いています。シェリー酒も、飲みやすいものから独特な香りのものまでいろいろあって面白いですよ。スペイン料理全般に合います。
友井
あらためて、スペイン料理の魅力とは?
佐藤
スペイン料理は、学ぶほど奥が深いと感じます。ヨーロッパ料理に与えた影響も大きいんです。コロンブスの新大陸発見からもたらされた唐辛子やパプリカ、ジャガイモ、トマトなどが無ければヨーロッパの食文化は成り立ちませんし、日本に最初に伝わった西洋料理もスペイン料理です。日本の洋食はフレンチがルーツのように言われていますが、フレンチが日本に入ったのは文明開化の頃、スペイン料理は、フランシスコ・ザビエルともに戦国時代にやってきました。今や日本料理の天婦羅もルーツはスペインですし、マヨネーズもスペイン発祥です。
友井

会計事務所は、忙しい料理人の強い味方です。

飲食店の経営者として、会計事務所へのご意見などをいただけますか?
佐藤
昨今の経営関係の手続きは、私が最初に店を構えた22年前に比べてだいぶ複雑になったなと感じます。以前は、頑張れば自分で何とかできると思っていましたが、今は、プロに頼まなければ無理ですね。店の仕事をしながら、いろいろ調べたり、税務署へ相談に行ったりするのは大変ですし、節税なども素人では難しいです。会計業務は、知識がある人、プロに任せた方が余裕も出て、料理にもいい影響が出ると思います。
友井
最後に、同じように店を始めたいと思ってる人にアドバイスをお願いします。
佐藤
私ごときがおこがましいのですが、今回のコロナ禍で思い知ったことは、運転資金は潤沢にあった方が良いということです。返済を考えると最低限の融資で済ませたくなってしまいますが、政策金融公庫の金利などは住宅ローン並みに安いので、出来る限りの融資を受けておいても良かったと思います。そういう相談にも、会計事務所は強い味方になってくれます。
友井

編集後記
友井さんの半生の紹介が大半になってしまいましたが、料理は間違いなく美味しいです。パエリア以外のメニューも絶品ですし、ドリンクやデザートも豊富です。面白い話が多くて、まだまだ書ききれていませんが、「食事を楽しむのは、人間だけの文明。楽しい食事時間をクリエイトするのが料理人の仕事」といった熱いお話や「スペインに携わっている人は個性的で人生も面白い」といった雑談も印象的でした。(佐藤)

パエリアダイニング ポコ・ロコ
茨城県つくば市竹園1-9-2 デイズタウン1階
https://ポコロコ.com