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共同創業で決めておくこと|持分と創業株主間契約

共同創業で最も多い失敗が、持分を50:50にすることです。意見が割れた瞬間、会社として何も決められなくなります。持分の決め方、途中で抜けた人の株をどう扱うか、創業株主間契約で決めておくべきことを整理しました。

こんにちは。つくば市の税理士法人FLOW会計事務所、代表税理士の佐藤です。

つくばは、研究者と経営経験者が組んで会社を立ち上げるケースが多い土地です。技術を持つ人と、売る人。この組み合わせは強い反面、持分の設計を誤ると数年後に行き詰まります。

いちばん重いご相談が、これです。

「共同創業者と話がまとまらなくて、何も進まないんです」

この記事の結論

  • 持分50:50は避けてください。 意見が割れると決議できず、会社が止まります
  • 株主総会の普通決議は過半数、定款変更などの特別決議は3分の2以上
  • 実質的に動かすには、代表が3分の2以上を持つのが安全
  • 貢献度は時間とともに変わる。設立時の貢献で固定すると後で揉めます
  • 創業株主間契約で、離脱時の株の扱いを決めておく
  • 合同会社なら損益の分配を定款で自由に設計できる
  • 役員報酬は持分と切り離して決められる。報酬で調整するほうが柔軟

なぜ50:50が危険なのか

「対等なパートナー」という気持ちは理解できます。ただ、会社の意思決定は多数決です。

決議の種類必要な議決権主な内容
普通決議過半数役員の選任・解任、役員報酬の決定、計算書類の承認
特別決議3分の2以上定款変更、増資、事業譲渡、解散、組織変更

50:50だと、過半数に届きません。

2人の意見が一致している間は問題ありません。問題は、一致しなくなったときです。

  • 役員報酬を変えられない
  • 新しい役員を入れられない
  • 増資ができない(=資金調達ができない)
  • 定款を変えられない
  • 相手を解任できない

会社が完全に停止します。 これをデッドロックと呼びます。

そして厄介なのは、この状態を解消する手段がほぼないことです。どちらかが株を手放すか、会社を清算するか。実際には、話し合いができない状態だからこそ行き詰まっているわけで、解決は容易ではありません。


推奨する持分の配分

原則:代表が3分の2以上

意思決定を止めないことを最優先にしてください。

配分評価
代表67%以上:共同創業者33%以下推奨。 特別決議まで単独で通せる
代表51〜66%普通決議は通るが、定款変更に相手の同意が必要
50:50デッドロック。避ける
代表49%以下代表が自分で自分を守れない

「相手に失礼では」と思われるかもしれません。ただ、揉めたときに会社が止まるリスクを、設立時に引き受けるかどうかという話です。

この話を設立前にできない相手とは、そもそも共同創業しないほうがいいとも言えます。

3人以上の場合

全員が3分の1を超えないように設計してください。1人が3分の1超を持つと、その人が反対するだけで特別決議が通りません(拒否権を持つことになります)。


貢献度は、時間とともに変わります

設立時の貢献で持分を固定するのが、2つ目の失敗パターンです。

創業時はこう見えます。

  • Aさん:技術を持っている。これがないと事業が成立しない
  • Bさん:資金を出す。営業もやる

だから50:50、あるいは技術者が多めに。 自然な発想です。

ところが3年後、こうなることがあります。

  • Aさん:技術は完成した。以降の関与は限定的
  • Bさん:毎日営業し、人を雇い、資金繰りを回している

それでも持分は変わりません。 株は、一度渡したら簡単には戻りません。

逆のパターンもあります。技術者が残って事業を伸ばし、資金を出した人が早期に離脱する。この場合、離脱した人が株を持ったままになります。


創業株主間契約で決めておくこと

株の配分と同じくらい重要なのが、「抜けたときどうするか」です。

創業株主間契約(創業者間契約)という書面で、設立時に決めておきます。

① ベスティング(段階的な権利確定)

株を一度に渡さず、在籍期間に応じて確定させる仕組みです。

在籍期間確定する持分
1年未満0%(全部買い戻せる)
1年経過25%
2年経過50%
3年経過75%
4年経過100%

「1年で抜けた人が30%を持ったまま」という事態を防げます。

形式上は株を渡しつつ、一定期間内に離脱した場合は会社または他の創業者が買い戻せると契約で定めます。

② 買取価格の決め方

ここを決めていないと、離脱時に必ず揉めます。

価格の決め方特徴
取得価額(払込金額)シンプル。創業期はこれが一般的
簿価純資産計算が明確
第三者評価公平だが費用と時間がかかる

創業期は「取得価額で買い戻す」が最も揉めません。 10万円で取得した株は10万円で戻す、という形です。

③ 譲渡制限

第三者に勝手に売られないようにします。

定款で株式譲渡制限を付けるのは当然として(非公開会社なら通常付いています)、契約でも他の創業者への優先交渉権を定めておきます。

共同創業者が株を第三者に売ると、知らない人が株主になります。 これは実務上かなり厄介です。

④ 競業避止・秘密保持

離脱後に同じ事業を始められると困る場合、期間と範囲を限定して定めます。

ただし、過度に広範な競業避止は無効とされる可能性があります。職業選択の自由との兼ね合いなので、弁護士に確認してください。

⑤ 役員の退任と株の関係

役員を辞めたら株も手放すのかを明記します。ここが曖昧だと、「辞めたけど株主として口を出す」という状態になります。


持分ではなく、報酬で調整する

実は、貢献度の差は役員報酬で調整するほうが柔軟です。

持分役員報酬
変更のしやすさ困難(譲渡・買取が必要)毎期変えられる
貢献度の反映固定される実態に合わせられる
税務譲渡所得・贈与の論点損金(定期同額給与)

持分は会社の支配権、報酬は働きの対価。 この2つを分けて考えてください。

「今年はAさんが頑張ったから報酬を厚く」という調整は、毎期できます。ただし期首から3か月以内に決める必要があるので、年度の初めに話し合うルールにしておくとスムーズです。


合同会社という選択肢

共同創業に限っては、合同会社が向くケースがあります。

合同会社は、損益の分配を定款で自由に決められます。 出資比率が6:4でも、利益の分配を5:5にできます。

株式会社合同会社
利益の配分出資比率に比例定款で自由に設計
意思決定議決権の多数決原則として社員全員一致
外部出資可能不可

ただし裏返しのリスクがあります。合同会社は、定款変更・社員の加入・持分の譲渡が原則として全員一致です。

株式会社の50:50より、さらに動けなくなる可能性があります。

合同会社で共同創業するなら、定款で決議要件を明記しておくことが必須です。「社員の過半数の同意で決する」といった定めを置けます。既定のまま流すと、後で必ず困ります。

なお、将来VCから出資を受ける可能性があるなら株式会社の一択です。合同会社は株式を発行できません。


よくある失敗パターン

1. 持分50:50にする

最も多く、最も解決が難しい失敗です。

2. 創業株主間契約を作らない

「仲がいいから大丈夫」と思って作らない。揉めてからでは契約を結べません。 仲がいいうちにしか作れない書面です。

3. 口約束で決める

「抜けるときは株を返すって言ってたよね」は通用しません。書面にしてください。

4. 貢献度を設立時点で固定する

ベスティングを入れずに全株を渡すと、早期離脱時に戻せません。

5. 名義を借りる

資本金を見せるために他人名義で出資してもらう。名義株は後から必ず問題になります。 相続が発生すると、相続人が株主として登場します。

6. 株を渡すタイミングを誤る

協力してくれた人に「お礼」として株を渡す。株は配当と議決権がついてくるものです。 感謝の表明には使わないでください。


よくあるご質問

Q. すでに50:50で設立してしまいました。

A. いますぐ創業株主間契約を結んでください。 関係が良好なうちなら、買取条項や離脱時のルールを後から定められます。また、片方が1株譲渡して51:49にするだけでも、普通決議は通るようになります。

Q. 持分を後から変えられますか?

A. 譲渡は可能ですが、価格によっては贈与税や所得税の問題が生じます。 低廉譲渡と判断されると課税されるので、税理士に相談してください。

Q. 種類株式を使えば対等にできますか?

A. 議決権制限株式などを使えば、「出資は多いが議決権は少ない」という設計ができます。ただし設計と登記が複雑になり、費用もかかります。 創業期にはやや重い選択です。

Q. 大学の研究成果を使う場合、注意点はありますか?

A. 大学との間で知的財産の帰属を明確にしてください。 職務発明の扱い、ライセンス契約の有無、共同研究契約の制約。ここが曖昧なまま事業化すると、後から大学側と争いになります。つくばで創業する場合は特に重要です。

Q. 創業株主間契約は誰に頼めばいいですか?

A. 弁護士の領域です。 私たちは税務と持分の関係について助言できますが、契約書の作成は弁護士にご依頼ください。必要であればご紹介します。


仲がいいうちにしか決められません

最後に一つ。

共同創業の相談で、持分の話をすると空気が重くなることがあります。「そんな話をしたら、相手を信用していないと思われる」と。

でも、順序が逆だと思っています。

揉めたときのルールを先に決めておくから、安心して組める。 揉めてから話し合おうとすると、そのときにはもう話し合える関係ではありません。

創業株主間契約は、仲がいいうちにしか作れない書面です。 そして、作っておけば一度も使わずに済むかもしれません。使わずに済むなら、それが一番いい結果です。

FLOW会計事務所では、新規でご契約いただくお客様の約9割が創業1年未満の方です。共同創業のご相談では、持分と役員報酬をセットで設計します。 契約書が必要な場面では、弁護士をご紹介します。

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参考リンク(一次情報)

本記事は2026年10月時点の公表情報に基づいています。制度内容・期限は変更される可能性がありますので、最新の情報は各機関または当事務所までご確認ください。