個人事業で取った建設業許可は、法人化しても引き継げません。 取り直しの間、500万円以上の工事を受けられなくなります。許認可が絡む業種は、設立の順番も資本金の設計も通常と違います。つくばで創業する場合の注意点を整理しました。
こんにちは。つくば市の税理士法人FLOW会計事務所、代表税理士の佐藤です。
私は行政書士でもあり、FLOWグループには行政書士事務所があります。税務と許認可の両方を見ていると、順番を間違えて困るケースが本当に多いと感じます。
一番つらいご相談がこれです。
「法人にしたら、許可を取り直せと言われました」
この記事の結論
- 個人事業で取った許可は、法人化しても引き継げません。 原則として取り直しです
- 建設業なら、取り直しの間は500万円以上の工事を受けられません
- 許認可は資本金・事務所・役員構成に要件を課すことがある
- 建設業の財産的基礎は自己資本500万円以上。資本金の設計が消費税の話より優先されることも
- 設立の前に、要件を全部洗い出すこと。 登記してからでは直せないものがある
- 許可が下りるまで1〜2か月かかる。事業開始のスケジュールに織り込む
最大の落とし穴:個人の許可は引き継げません
これが一番お伝えしたいことです。
個人事業主として建設業許可を持っている方が法人化すると、その許可は法人に引き継がれません。 法人として新規に取り直すことになります。
何が起きるか
| 時期 | 状態 |
|---|---|
| 法人設立前 | 個人の許可で営業できる |
| 法人設立後、許可が下りるまで | 500万円以上の工事を受けられない |
| 許可取得後 | 通常どおり |
この空白期間が1〜2か月発生します。 知事許可の審査期間は30〜45日程度が目安です。
元請から「許可業者でないと発注できない」と言われている場合、この期間は仕事が止まります。
対処法
設立のタイミングを、工事の谷間に合わせることです。繁忙期に法人化すると、空白期間がそのまま機会損失になります。
また、個人事業を廃業せず、許可が下りるまで並行させるという選択肢もあります。ただし消費税や社会保険の論点が絡むので、設計が必要です。
いずれにせよ、設立日を決める前に相談してください。 決まってからでは調整できません。
許認可が「設立の設計」に影響する3つのポイント
① 資本金
建設業許可(一般)の財産的基礎は、自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力です。
新規申請なら、500万円以上の預金残高証明書で証明できるケースが多いですが、設立時の資本金を500万円にしておくほうが確実です。
ここで、記事15で書いた話とぶつかります。
| 判断軸 | 言っていること |
|---|---|
| 消費税 | 資本金1,000万円未満にして免税期間を確保したい |
| 建設業許可 | 自己資本500万円以上が必要 |
幸い、この2つは両立します。 資本金500万円〜999万円に設定すれば、どちらも満たせます。
ただし業種によっては、もっと高い資本金が求められます。
| 業種 | 資本金・財産要件の例 |
|---|---|
| 建設業(一般) | 自己資本500万円以上 |
| 建設業(特定) | 資本金2,000万円以上、自己資本4,000万円以上など |
| 一般労働者派遣 | 資産総額2,000万円以上(事業所ごと)など |
| 旅行業 | 種別により基準資産額が定められている |
| 有料職業紹介 | 資産要件あり |
資本金2,000万円が必要なら、消費税の免税は最初から諦めることになります。 この判断を設立前にしておかないと、後から増資して免税を失うことになります。
② 事務所の要件
記事23で本店所在地の話を書きましたが、許認可が絡むと制約が一段強くなります。
| 業種 | 事務所の要件 |
|---|---|
| 建設業 | 営業所としての実体。居住空間と明確に区分されていることを求められる場合がある |
| 宅地建物取引業 | 独立性のある事務所 |
| 人材派遣・有料職業紹介 | 面積要件、個人情報を適切に管理できる構造 |
| 古物商 | 営業所の実体。賃貸なら使用承諾書を求められることも |
自宅を本店所在地にすると、許可が取れない業種があります。 バーチャルオフィスは、ほとんどの許認可で要件を満たしません。
③ 役員構成
建設業許可で最大のハードルが、経営業務の管理責任者(経管)です。
法人の場合、常勤役員のうち1人が次のいずれかに該当する必要があります。
| パターン | 要件 |
|---|---|
| 1 | 許可を受けようとする建設業で5年以上の経営業務の管理経験 |
| 2 | それ以外の建設業で7年以上の経営業務の管理経験 |
| 3 | 経管に準ずる地位での6年以上の経営補佐経験 |
| 4 | 2年以上の役員経験+5年以上の財務・労務・運営の担当経験 |
この経験を持つ人を、常勤役員として登記する必要があります。
つまり、誰を役員にするかが、許可が取れるかどうかを直接決めます。 設立時の役員構成を何となく決めてしまうと、後から役員を増やす登記が必要になります。
専任技術者(営業所技術者等)も、営業所ごとに常勤で配置が必要です。こちらは役員でなくても構いませんが、常勤の従業員として雇用しなければなりません。社会保険の加入実績で常勤性を確認されます。
主な許認可と、取得までの目安
| 業種 | 窓口 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 建設業許可(知事) | 都道府県(茨城県) | 30〜45日 |
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 2週間程度 |
| 古物商許可 | 警察署(公安委員会) | 40日程度 |
| 宅地建物取引業免許 | 都道府県 | 30〜40日 |
| 産業廃棄物収集運搬業 | 都道府県 | 1〜2か月 |
| 一般貨物自動車運送事業 | 運輸局 | 3〜5か月 |
| 有料職業紹介・労働者派遣 | 労働局・厚労省 | 2〜3か月 |
| 酒類販売業免許 | 税務署 | 2か月程度 |
運送業や派遣業は、半年近くかかることもあります。 事業開始の予定から逆算してください。
なお、申請できるのは法人設立後です。登記事項証明書が必要だからです。つまり、
設立登記(2〜3週間)→ 許可申請 → 審査(1〜5か月)→ 営業開始
という流れになります。創業融資の相談も並行させると、全体で3〜6か月のプロジェクトになります。
つくばで創業する場合の補足
つくば市の特定創業支援等事業の証明書を取ると、設立の登録免許税が半額になり、補助金で実質ゼロにできます。 ただし証明書の取得に最短2か月かかります。
許認可が絡む場合、スケジュールはこうなります。
| 段階 | 期間 |
|---|---|
| 特定創業支援等事業の支援受講 | 1か月以上 |
| 証明書の発行 | 2週間 |
| 補助金の交付申請 | 1週間 |
| 設立登記 | 2〜3週間 |
| 許可申請〜取得 | 1〜5か月 |
| 合計 | 4〜8か月 |
「来月から営業したい」という段階では、どれも間に合いません。
逆に言えば、半年前から動けば全部使えます。 証明書で設立費用をゼロにしつつ、融資の相談も進め、許可の準備もする。この順番を組めるかどうかで、創業時の手元資金がまったく変わります。
よくある失敗パターン
1. 法人化してから許可の引き継ぎができないと知る
最も多く、最も痛い失敗です。 空白期間がそのまま売上の穴になります。
2. 資本金を小さくしすぎて財産要件を満たせない
消費税のことだけ考えて資本金100万円にした結果、建設業許可の500万円要件を満たせない。増資するには登記費用がかかります。
3. 役員構成を後から変える
経管の要件を満たす人を役員に入れ忘れ、設立後に役員変更登記。登録免許税1万円+司法書士報酬がかかります。
4. 自宅を本店にして事務所要件を満たせない
許可が取れず、事務所を借りて本店移転登記。3万円+報酬です。
5. 許可取得前に営業を始めてしまう
無許可営業は罰則の対象です。 500万円未満の軽微な工事なら許可不要ですが、線引きを誤ると行政処分につながります。
6. 社会保険の加入を後回しにする
建設業許可の要件に適切な社会保険への加入が入っています。未加入だと許可が下りません。記事08で書いたとおり、法人は役員1人でも強制適用です。
よくあるご質問
Q. 許可が必要かどうか、どう判断しますか?
A. 業種ごとに根拠法令が違います。建設業なら1件500万円以上(建築一式は1,500万円以上)の工事が基準です。迷ったら、営業を始める前に確認してください。 無許可営業は後から取り返せません。
Q. 設立と許可申請、どちらを先に進めるべきですか?
A. 許可申請には登記事項証明書が必要なので、設立が先です。 ただし要件の確認と書類集めは設立前から始められます。実務上は「要件確認 → 設立設計 → 登記 → 申請」の順です。
Q. 行政書士に頼むと費用はどれくらいですか?
A. 業種と難易度によります。建設業許可(知事・新規)なら、法定手数料9万円に加えて報酬がかかるのが一般的です。自分で申請することも可能ですが、要件の証明書類を集めるのに相当な時間がかかります。
Q. 税理士と行政書士、両方に依頼が必要ですか?
A. 通常は別々の専門家になります。FLOWグループには行政書士事務所があるので、税務と許認可を同じ窓口で進められます。 資本金や役員構成は税務と許認可の両方に関わるため、分かれていると調整に手間がかかります。
Q. 許可を取った後に気をつけることは?
A. 決算変更届(事業年度終了届)を毎年提出する必要があります。これを怠ると更新ができません。決算申告とセットで管理するのが確実です。また、5年ごとの更新も忘れないでください。
順番は、あとから変えられません
最後に一つ。
会社設立の相談で、私たちがまず聞くのは「許認可が必要な事業ですか」です。
必要なら、そこから逆算して全部を組み立てます。資本金をいくらにするか、誰を役員にするか、事務所をどこにするか。すべてが許可の要件に縛られます。
逆に、許認可が不要な事業なら、資本金も役員も自由に設計できます。この2つは、まったく別のプロジェクトだと考えてください。
そして許認可が絡む場合、設立の判断を1つ間違えるごとに、数万円の登記費用と数週間の遅れが発生します。 事業を止めている間の機会損失を含めれば、金額はもっと大きくなります。
FLOW会計事務所では、新規でご契約いただくお客様の約9割が創業1年未満の方です。グループ内に行政書士事務所があるので、税務と許認可を一体で設計できます。
FLOWのサポート
- 会社設立サポート … 許認可の要件を踏まえた資本金・役員・本店の設計
- 本店所在地を自宅にする前に … 事務所要件との関係
- 新設法人の消費税 … 資本金の判断が絡みます
- つくば市の会社設立は実質0円にできる … 設立費用を抑える制度
許認可が必要な業種かどうか分からない、という段階でご相談ください。 そこから整理します。
- お電話:0120-306-376(平日9:00-18:00)
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参考リンク(一次情報)
本記事は2026年10月時点の公表情報に基づいています。制度内容・期限は変更される可能性がありますので、最新の情報は各機関または当事務所までご確認ください。







