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本店所在地を自宅にする前に|つくば市で確認すべき6点

自宅を本店所在地にすれば、家賃はかかりません。ただし賃貸借契約の用途制限、管理規約、登記簿で住所が公開されること、許認可の事務所要件など、先に確認すべき点が6つあります。つくば市で創業する場合の選択肢もあわせて整理しました。

こんにちは。つくば市の税理士法人FLOW会計事務所、代表税理士の佐藤です。

会社設立のご相談で、ほぼ必ず出てくる論点です。

「最初は自宅でいいですよね?」

多くの場合、構いません。 創業期に事務所を借りるのは固定費として重いですし、法律上、自宅を本店所在地にすることに制限はありません。

ただ、後から「しまった」となる点が6つあります。順に見ていきます。

この記事の結論

  • 自宅を本店所在地にすること自体は法律上まったく問題ない
  • ただし賃貸借契約で禁止されていることがある。契約書を必ず確認
  • 分譲マンションは管理規約で事務所使用が制限されていることがある
  • 登記簿は誰でも取得できる。 自宅住所が公開される
  • 建設業、人材派遣など許認可に事務所要件がある業種は要注意
  • 引っ越すたびに変更登記が必要。 管轄内なら3万円、管轄外なら6万円
  • バーチャルオフィスは法人口座の開設と融資審査で不利になることがある

① 賃貸借契約を確認する

賃貸物件に住んでいる場合、これが最優先です。

多くの居住用賃貸借契約には、「居住以外の目的に使用してはならない」という用途制限の条項があります。

バレるのか

登記簿は誰でも取得できます。 大家さんや管理会社が調べようと思えば、調べられます。

また、法人宛の郵便物が届く、取引先が訪ねてくる、ウェブサイトに住所を載せるといったことで、実務上は把握されます。

発覚するとどうなるか

契約違反として是正を求められるか、最悪の場合契約解除です。住む場所と事業所を同時に失うことになります。

対処法

事前に大家さんか管理会社に相談してください。

「法人登記をしたい。来客はなく、郵便物が届く程度」と説明すれば、了承されるケースは多いです。書面で承諾をもらっておけば、後々の争いを防げます。

黙ってやるのが一番まずい選択です。


② 分譲マンションは管理規約を確認する

持ち家のマンションでも、管理規約で用途が「専ら住宅として使用する」と定められていることがあります。

国土交通省の標準管理規約がベースになっているマンションが多く、事務所としての使用が制限されているケースがあります。

判断の目安

実態問題になりにくい問題になりやすい
来客ほぼない頻繁にある
看板・表札出さない法人名の看板を出す
郵便物通常の量大量の荷物・宅配
従業員いない複数人が出入りする

実質的に住居として使っていて、登記しているだけなら、問題になることは少ないです。逆に、人の出入りが増えると他の居住者からの苦情につながります。

心配な場合は、管理組合に確認してください。


③ 自宅住所が公開されます

これが一番見落とされる点です。

登記事項証明書は、手数料を払えば誰でも取得できます。 法務局でも、オンラインでも。

つまり、本店所在地にした自宅住所は、誰でも調べられる状態になります。

どこで表に出るか

  • 登記事項証明書(誰でも取得可能)
  • 国税庁の法人番号公表サイト(インターネットで無料公開)
  • 許認可の公開情報
  • 会社のウェブサイト、名刺、請求書
  • 特定商取引法に基づく表記(ネット販売をする場合は住所と電話番号の表示が必須)

特にネット販売は要注意

ECサイトやネットサービスを運営する場合、特定商取引法に基づく表記で住所と電話番号の公開が義務づけられています。

自宅住所と自宅の電話番号が、不特定多数に公開されることになります。女性の一人暮らしや、小さいお子さんがいる家庭では、慎重に判断してください。


④ 許認可の要件を確認する

業種によっては、事務所の形態そのものが要件になっています。

業種 要件の例
建設業許可 独立した事務所スペースが必要。居住空間と混在していると不可の場合あり
人材派遣業 面積要件や、個人情報を管理できる構造が求められる
古物商 営業所としての実態が必要。賃貸なら使用承諾書を求められることも
宅地建物取引業 独立性のある事務所が必要
飲食業・食品製造 当然ながら設備要件あり

許認可が必要な業種なら、設立前に要件を確認してください。 登記してから「この場所では許可が取れない」となると、変更登記からやり直しです。

つくばは研究機関との取引が多く、物品販売や研究支援で許認可が絡むケースもあります。


⑤ 融資審査での見え方

自宅が本店所在地であること自体は、融資でマイナスになりません。 創業期なら自然なことです。

問題になるのはバーチャルオフィスです。

バーチャルオフィスのリスク

住所だけを借りるサービスです。月数千円で一等地の住所が使えるので、見栄えは良くなります。

ただし、実務上こうなることがあります。

場面起きること
法人口座の開設審査が厳しくなる。 断られることもある
創業融資事業実態の確認が厳しくなる
許認可多くの業種で要件を満たさない
取引先の与信同じ住所に多数の法人が登記されているのが分かる

自宅のほうが、むしろ信用されます。 実際にそこで事業をしている実態があるからです。

創業期に見栄えを優先してバーチャルオフィスを選び、法人口座が開設できずに事業が始められないというケースを見たことがあります。


⑥ 引っ越すと変更登記が必要です

意外とコストがかかります。

本店所在地を変更すると、変更登記が必要です。登録免許税は次のとおりです。

移転先登録免許税
同一の法務局の管轄内3万円
管轄外への移転6万円(旧所在地分3万円+新所在地分3万円)

これに司法書士報酬が加わります。

茨城県の商業・法人登記は、水戸地方法務局の本局が県全域を管轄しています。したがって、県内の移転であれば管轄内です。県外へ移るときは管轄外になります。

創業期に引っ越す可能性はありますか

自宅兼事務所で始めて、2〜3年後に事務所を借りるというのはよくある流れです。そのたびに3万円+報酬がかかります。

あらかじめ分かっているなら、定款の本店所在地を「つくば市」までの最小行政区画にとどめておくと、市内の移転なら定款変更が不要になります(登記は必要です)。


つくば市での選択肢

自宅以外を選ぶ場合、つくばにはいくつか選択肢があります。

選択肢向いているケース
自宅一人で始める、来客がない、許認可が不要
つくばスタートアップパーク創業支援を受けながら拠点を持ちたい
つくば研究支援センター(TCI)技術系ベンチャー、研究設備が必要
シェアオフィス・コワーキング来客対応が必要、自宅住所を出したくない
賃貸事務所従業員を雇う、許認可の要件がある

つくばスタートアップパークとつくば研究支援センターは、つくば市の特定創業支援等事業の実施機関でもあります。 拠点を置きながら支援を受け、証明書を取得して登録免許税を半額にする、という流れが組めます。

詳しくは記事01で解説しています。


よくある失敗パターン

1. 賃貸借契約を確認せずに登記する

最も多い失敗です。 契約書を読み返すところから始めてください。

2. 特定商取引法の表記で自宅住所が全公開される

ネット販売を始めてから気づくパターンです。事業モデルが決まった段階で確認してください。

3. 許認可の要件を後から知る

変更登記からやり直しです。許認可が絡むなら、設立前に行政書士か所管窓口に確認してください。

4. 見栄えでバーチャルオフィスを選ぶ

法人口座が開設できず、事業開始が遅れます。創業期は実態のある住所が最強です。

5. 定款の本店所在地を番地まで書いてしまう

市内で引っ越すだけでも定款変更の決議が必要になります。最小行政区画までにとどめるのが一般的です。


よくあるご質問

Q. 自宅の家賃を経費にできますか?

A. 会社と個人で賃貸借契約を結ぶ形にすれば、事業で使用している部分に応じて経費にできます。床面積などの合理的な基準で按分します。ただし個人側には不動産所得が発生するので、トータルで有利かは計算が必要です。

Q. 持ち家の場合はどうなりますか?

A. 会社から個人へ家賃を払う形が考えられます。ただし住宅ローン控除への影響に注意が必要です。事業用部分の割合が大きいと、控除が制限されることがあります。

Q. 実家を本店所在地にできますか?

A. できます。所有者(親など)の承諾を得てください。郵便物の管理も現実的に回るかを確認しておきましょう。

Q. 本店所在地と実際に働く場所が違っても大丈夫ですか?

A. 問題ありません。本店以外の拠点は支店登記をしない限り登記不要です。ただし、許認可の要件や、法人住民税の均等割(事業所がある自治体ごとにかかります)には注意してください。

Q. つくば市で創業すると、住所で何か有利になりますか?

A. つくば市の特定創業支援等事業と新規創業促進補助金は、つくば市での創業が前提です。市外に本店を置くと使えません。記事01で詳しく解説しています。


「とりあえず自宅」で構いません。ただし確認は先に

最後に一つ。

創業期に自宅を本店所在地にするのは、合理的な選択です。 固定費を抑えられますし、融資審査でも不利にはなりません。

ただ、この記事で挙げた6点はどれも、登記してからでは直しにくいものばかりです。賃貸借契約の違反も、公開された住所も、許認可の要件も、後からでは手間がかかります。

確認は全部、半日あれば終わります。 契約書を読んで、管理規約を見て、許認可の要件を調べる。それだけです。

設立の手続きは1日で終わりますが、その日に決めた住所は、変えるのに3万円かかります。

FLOW会計事務所では、新規でご契約いただくお客様の約9割が創業1年未満の方です。設立前のご相談で、この6点は必ず確認しています。

FLOWのサポート

無料相談のあとに契約いただく必要はありません。ご予約制で土日祝日も対応しています。


参考リンク(一次情報)

本記事は2026年10月時点の公表情報に基づいています。制度内容・期限は変更される可能性がありますので、最新の情報は各機関または当事務所までご確認ください。