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合同会社と株式会社どちらを選ぶか|創業期の判断基準5つ

合同会社と株式会社、創業期はどちらを選ぶべきか。設立費用の差は10万円以上あり、株式会社には決算公告や役員登記といったランニングコストもあります。ただし、費用だけで決めると後悔します。判断基準を5つに整理しました。

こんにちは。つくば市の税理士法人FLOW会計事務所、代表税理士の佐藤です。

記事02で会社設立の費用を、記事03で法人化のタイミングを扱いました。どちらの記事でも「この比較は別記事で」と書いた論点があります。会社の形をどちらにするかです。

ご相談では、だいたいこう聞かれます。

「合同会社のほうが安いですよね。でも信用が落ちるって聞いて…」

半分正しくて、半分は古い情報です。順に見ていきます。

この記事の結論

  • 設立費用の差は10万円以上(株式会社 約16.7万円/合同会社 約6万円)
  • ランニングコストの差は、よく言われるほど大きくない。決算公告は電子公告にすれば年数千円で済む
  • 外部から出資を受けるなら株式会社の一択。 合同会社は株式を発行できず、上場もできない
  • 信用の差は縮まっている。Apple Japan も Google も日本法人は合同会社
  • 共同創業なら合同会社の利益配分の自由度が効く
  • 最大の落とし穴は事業承継。定款に一文入れておかないと、社員が亡くなった時点で会社が続かなくなる
  • 後から株式会社に変更できる。ただし20万円前後かかる

そもそも何が違うのか

細かい比較の前に、設計思想の違いを押さえておくと判断しやすくなります。

株式会社は「お金を出す人」と「経営する人」を分ける前提の器です。株主が出資し、取締役が経営する。だから株主総会があり、取締役の任期があり、決算を公告する義務があります。他人のお金を預かる仕組みなので、ルールが厳格です。

合同会社は「お金を出す人が自分で経営する」前提の器です。出資者(社員と呼びます)がそのまま経営者になる。他人のお金が入っていないので、ルールが緩い。

創業期の一人会社は、実態としては完全に後者です。株式会社にしても株主は自分ひとりで、株主総会は形式的なものになります。実態に合っているのは合同会社、というのが出発点です。

そのうえで、株式会社を選ぶ理由があるかどうかを見ていきます。


判断基準1:費用(差は思ったより小さい)

設立費用

項目株式会社合同会社
定款認証手数料15,000〜50,000円不要
収入印紙(電子定款なら0円)0円0円
定款謄本代約2,000円
登録免許税(最低額)150,000円60,000円
合計約167,000円約60,000円

差は約10万円です。詳しい内訳は「つくば市の会社設立費用」で解説しています。

なお、つくば市の特定創業支援等事業と補助金を使えば、どちらも実質ゼロ近くまで下がります。 そうなると初期費用の差は判断材料としてほぼ消えます。

ランニングコスト

ここがよく誤解されています。「株式会社は維持費がかかる」と言われますが、内訳を見ると印象が変わります。

項目株式会社合同会社
決算公告義務(会社法440条)不要
役員の任期・重任登記最長10年ごとに必要任期なし
法人住民税の均等割年7万円〜年7万円〜(同じ)
社会保険加入義務(同じ)加入義務(同じ)
法人税・消費税同じ同じ

決算公告を官報でやると年7万円強かかります。ただし、公告方法を「電子公告」にしておけば、自社サイトに貸借対照表を載せるだけで済み、実質的な費用はほぼゼロです。設立時の定款で決めておけば、後から変更する手間もありません。

役員の重任登記は、非公開会社なら任期を最長10年に設定できます。10年に一度、登録免許税1万円と司法書士報酬が発生する程度です。年あたりにすれば数千円です。

つまり、設計を間違えなければランニングコストの差はほぼありません。 「株式会社は維持費が高い」という説は、官報公告と2年任期を前提にした話です。


判断基準2:資金調達(ここは決定的)

外部から出資を受ける可能性があるなら、株式会社しかありません。

合同会社は持分会社という分類で、株式を発行できません。 ベンチャーキャピタルもエンジェル投資家も、株式を取得することで投資します。株式がなければ投資のしようがありません。上場もできません。

つくば市は研究成果を事業化するスタートアップが生まれやすい土地です。大学発ベンチャーや技術シーズを軸にした事業で、将来の資金調達を視野に入れているなら、最初から株式会社を選ぶべきです。

一方、融資については差がありません。 日本政策金融公庫も信用保証協会も、合同会社だからという理由で融資を断ることはありません。見られるのは事業計画と自己資金です。

資金調達の手段株式会社合同会社
融資(公庫・銀行・保証協会)○(差なし)
補助金・助成金○(差なし)
VC・エンジェルからの出資×
上場×

「融資だけなら合同会社で問題ない」というのが実務の答えです。


判断基準3:信用(差は縮まっているが、ゼロではない)

「合同会社だと信用されない」という話は、10年前ほどの重みはありません。

日本法人が合同会社である有名企業は珍しくありません。Apple Japan、Google、アマゾンジャパン、西友などが合同会社です。世界的企業が選んでいる形態を「信用がない」とは言いにくい状況になっています。

ただし、実務で差が出る場面は残っています。

  • 取引先の与信審査で「株式会社であること」を条件にしているケース
  • 官公庁や大手企業の入札・調達要件
  • 採用の場面で、求職者が会社形態を気にするケース

つくば市の場合、研究機関や大手メーカーとの取引が想定されるなら、株式会社のほうが余計な説明をせずに済みます。 「合同会社って何ですか」と聞かれる手間そのものがコストです。

逆に、一般消費者向けのサービスや、フリーランス的な受託であれば、会社形態を気にされることはほとんどありません。


判断基準4:利益配分の自由度(共同創業で効く)

見落とされがちですが、共同で立ち上げる場合に大きな差になります。

株式会社は、利益の配分が出資比率に比例します。 60万円出した人と40万円出した人では、配当は6対4です。

合同会社は、定款で自由に決められます。 出資は6対4でも、利益の配分は5対5にできます。

創業期は「お金を出す人」と「手を動かす人」の貢献度が一致しないことがよくあります。片方が資金を、片方が技術やノウハウを持ち寄るケースです。このバランスを定款で設計できるのは、合同会社の実質的なメリットです。

ただし裏返すと、合同会社は社員全員の同意が必要な事項が多いという性質もあります。定款変更、新たな社員の加入、持分の譲渡は原則として全員一致です。共同創業者と意見が割れたとき、株式会社より動けなくなる可能性があります。

複数人で始めるなら、設立時に定款で決議要件をきちんと設計しておくこと。 ここを既定のまま流すと、後で揉めます。


判断基準5:事業承継(最大の落とし穴)

これが一番お伝えしたい点です。

合同会社では、社員が亡くなると、原則としてその社員は退社になります。相続人は持分を相続するのではなく、持分の払戻しを請求する権利を得ます。

一人社長の合同会社でこれが起きると、どうなるか。社員がゼロになり、会社は解散事由に該当します。 事業を続けたくても、会社そのものが続きません。

対策は、定款に一文入れておくだけです。

社員が死亡した場合、その相続人が当該社員の持分を承継して社員となる

この定めがあれば、相続人が社員の地位を引き継げます。設立時に入れておけば追加費用はゼロ、後から入れると定款変更の手続きが必要です。

株式会社の場合、株式は通常どおり相続されます。 会社が消えることはありません。

私たちが合同会社の設立をお手伝いするときは、この条項を必ず確認します。 ネット上の定款テンプレートには入っていないことがあり、そのまま設立している会社を実際に見かけます。


後から変更できるのか

できます。合同会社から株式会社への組織変更という手続きです。

ただし、それなりにかかります。

項目目安
登録免許税(設立登記+解散登記)約60,000円〜
官報公告(債権者保護手続)約40,000円
司法書士報酬100,000円前後
合計20万円前後

手続きにも1か月半ほどかかります。「とりあえず合同会社で始めて、必要になったら株式会社に」という考え方は成立しますが、20万円と1か月半のコストは見込んでおいてください。

最初から株式会社にする場合との差額は約10万円ですから、「3年以内に株式会社にする可能性が半分以上ある」なら、最初から株式会社を選んだほうが合理的です。


まとめ:どちらを選ぶか

こういう方はおすすめ
将来VCから出資を受けたい/上場を視野に入れている株式会社
大手企業・研究機関・官公庁との取引が中心になる株式会社
人を採用して組織を大きくしていく計画がある株式会社
一人または少人数で、融資と自己資金で回していく合同会社
資金より技術やノウハウの貢献度が高い共同創業合同会社
BtoCサービス、受託中心で取引先の与信が厳しくない合同会社

判断が割れたときは、株式会社を選んでおくのが無難だと考えています。差額10万円に対して、後から変更するコストが20万円だからです。「迷っている」という状態は、将来どちらに転ぶかわからないということですから、変更コストの小さいほうを先に取るのが合理的です。


よくあるご質問

Q. 税金は変わりますか?

A. 変わりません。法人税・地方税・消費税の計算は同じです。社会保険の加入義務も同じです。役員報酬の扱いも同じで、期首から3か月以内に決めたら1年間変更できません。

Q. 代表者の肩書きはどうなりますか?

A. 株式会社は「代表取締役」、合同会社は「代表社員」です。名刺に「CEO」「代表」と書くことは、どちらでも問題ありません。

Q. 合同会社だと融資で不利になりませんか?

A. なりません。日本政策金融公庫でも信用保証協会でも、会社形態で判断されることはありません。見られるのは事業計画、自己資金、経営者の経験です。

Q. 一人で設立する場合、どちらが手続きは簡単ですか?

A. 合同会社です。定款の公証人認証が不要なので、その分の日数と費用がかかりません。ただし専門家に依頼するなら、手間の差はほとんど感じないはずです。

Q. つくば市の補助金は、どちらでも使えますか?

A. 使えます。特定創業支援等事業の証明書による登録免許税の軽減も、新規創業促進補助金も、両方の形態が対象です。ただし合同会社は定款認証がないため、補助されるのは登録免許税部分のみになります。

Q. 合同会社の定款に入れておくべき条項はありますか?

A. 本文で触れた相続に関する条項は必須と考えてください。加えて、公告方法を「電子公告」にしておくこと、共同創業なら決議要件を明記しておくことをおすすめします。


器を選ぶより、中身の設計のほうが重要です

ここまで比較してきましたが、会社形態の選択は、設立時の判断の中では優先順位が高くありません。

同じタイミングで決める資本金の額、事業年度、役員報酬。これらのほうが、その後の数年間に与える影響は大きいです。資本金を1,000万円以上にすれば初年度から消費税を納めますし、役員報酬を決め損ねれば1年間そのままです。

会社形態は、20万円払えば後から変えられます。 役員報酬の設定を1年間間違えたコストは、取り戻せません。

FLOW会計事務所では、新規でご契約いただくお客様の約9割が創業1年未満の方です。会社形態のご相談は、その先の設計とセットでお話しします。

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参考リンク(一次情報)

本記事は2026年9月時点の公表情報に基づいています。制度内容・費用は変更される可能性がありますので、最新の情報は各機関または当事務所までご確認ください。