
事業を始める、または既存事業を拡大する際、「事業計画」は単なる形式的な書類だと考えていませんか?
特に法人設立後5期未満の代表者様は、日々多くの課題に直面されていることと思います。しかし、実はこの「事業計画」こそが未来を照らす「羅針盤」として機能し、事業の成功確率を飛躍的に高めるための、最も重要なツールなのです。
なぜに「事業計画」が不可欠なのか、その本質と活用法を解説します。
1.事業計画は「なぜ」必要なのか?
事業計画を作成する目的は、大きく分けて二つあります。それは「自分が見るため」と「他人に見せるため」の視点を持つことです。
~自身の構想を明確にし、事業を具体化するため~
事業計画は、経営者の頭の中にあるアイデアや目標を具体的に整理し、書面に落とし込むことで「具体性(解像度)」を高め、一貫性のある事業ストーリーを組み立てる手助けをします。これにより、これまで個別に検討してきた事項が体系的にまとまり、事業の本質的な目的や具体的な実施方法について深く考察する機会が生まれます。
「地図を持たずに旅に出る」ような”なりゆき経営”を防ぎ、潜在的なリスクを特定し、リソースを最も効果的に配分するための戦略的なツールとなります。また、計画通りに進まなかった場合でも、「なぜそうならなかったのか」を分析し、改善策を考えるための重要な拠り所となります。
~外部からの協力や資金支援を得るため~
事業計画は、外部からの協力や資金支援を得る上で不可欠なツールです。金融機関からの融資では説得力のある事業計画は不可欠です。銀行は将来の返済能力を知りたいと考えており、計画書は評価を高める重要な材料となります。
また、仲間や従業員を集める際にも、事業の魅力や将来性を具体的に説明するために必要です。経営者の頭の中にあるビジョンや目標を可視化し、社内メンバーや求職者、取引先といった関係者全員と共有することで、組織の一体感を高め、共通の目標に向かって協力する体制を築きます。
この共有が社員のリーダーシップや意思決定能力を磨き、会社全体のモチベーション向上に繋がり、事業拡大の鍵となっていきます。
2.事業計画の「核」となる考え方
事業計画は、単に数字を並べるだけではありません。その根底には、自社の事業に対する深い洞察と戦略が求められます。
~「ビジョン(目的地)」の明確化~
まず最初に「どこを目指し、何を実現したいのか」というビジョンを明確にすることが、事業計画の出発点です。最も重要なのは、その計画が経営者にとって「ワクワクする」ものになっているかどうかです。単に売上を前年比10%増やすといった現在の延長線上の数字ではなく、具体的な5年後の売上、従業員の増加、新しいオフィスなど、将来の姿を鮮明にイメージし、それを数値化することが、計画を「現在の延長」ではなく「未来を創造する」ものに変える鍵です。
ビジョン実現に必要なもの(人材、設備など)を洗い出し、かかる費用を予算として算出する中で、計画の無理や矛盾を発見し、現実的な代替案を検討できます。
~「損益計算書」を活用した数値計画の立て方~
事業計画の根幹は、売上、原価、粗利、固定費、経常利益から成る損益計算書です。これは事業の収益性を評価し、将来の利益を予測するための重要な要素になります。
計画策定にあたっては、現実的な売上目標から利益を逆算するアプローチが重要です。市場データや過去の実績を基に、現実的かつ達成可能な売上目標を設定し、計画全体の現実性を高めます。
固定費は急に変動しにくいため、売上が少し増えるだけでも最終利益は大きく伸びる可能性がありますが、中小企業では過度な利益追求ではなく、税率が低い範囲で利益を抑え、残りを役員報酬や社員の給料に還元することで、節税と社員の豊かさを両立できます。
3.作成した事業計画を「生きた羅針盤」にする活用法
資金調達、特に融資を受ける際には、事業計画の内容とその表現方法が非常に重要になります。
~「徹底した事前準備」と「根拠」~
作成した事業計画書には、売上や経費の数字に具体的な根拠が必要です。金融機関は数字と論理的な説明を重視しますので、融資希望額の資金使途と自己資金を明確に説明できることが求められます。
自身の経験が事業にどう活きるか、競合との差別化点、市場の状況を具体的に示す必要があります。また、事業のリスクを認識し、それに対する対策も考えておきましょう。
結論:事業計画はあなたの事業の未来を描く羅針盤
事業計画は、一度作ったら終わりではありません。それは貴社の事業の「設計図」であり、市場や内部環境の変化に応じて「生きた文書」として定期的に見直し、更新することが不可欠です。
当事務所では、お客様の事業計画作成から、その後の経営サポートまで、一貫してお手伝いしております。事業計画の策定にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。共に、あなたの事業の成功への道を切り拓きましょう。
No comment yet, add your voice below!