こんにちは!FLOW会計事務所の堀です。

前回のブログでは、損益計算書に示される5つの利益について解説しました。それぞれの利益が会社のどの側面での儲けを示しているかをご理解いただけたかと思います。

では、これらの利益は、売上が増減したときに、同じ割合で変化するのでしょうか?

例えば、「売上が10%減ったら、利益も10%減るんでしょ?」と考えていませんか?

実は、そうではありません。売上の変化は、利益にもっと大きな影響を与えます。その鍵を握るのが、「変動費」と「固定費」という費用の分類です。

今回は、この変動費と固定費の仕組みを理解することで、売上と利益の意外な関係、そして経営判断に役立つ考え方について解説します。

◆ 利益変動の鍵は「変動費」と「固定費」

会社の費用は、大きく分けて「変動費」と「固定費」のどちらかになります。

  1. 変動費(へんどうひ):売上の増減に比例して変動する費用です。例:商品の仕入れ原価、材料費など。ラーメン屋さんの麺やスープ、具材の原価などがこれにあたります。
  2. 固定費(こていひ):売上の増減にかかわらず、あまり変動しない費用です。例:人件費(給料、役員報酬)、家賃、水道光熱費、減価償却費、広告宣伝費、リース料など。ラーメン屋さんの店員さんのお給料や家賃などがこれにあたります。

損益計算書では、売上から変動費(売上原価)を差し引いたものが「売上総利益(粗利)」となり、その売上総利益から固定費(販売費及び一般管理費など)を差し引いて「営業利益」「経常利益」が計算されます。

◆ 売上減少の衝撃!利益はもっと減る!?

ラーメン屋さんを例に、売上が変動した場合の利益への影響を考えてみましょう。

元の状態: 売上5,000万円、変動費1,500万円(売上の30%)、粗利3,500万円(売上の70%)、固定費3,000万円、経常利益500万円。

ここで、もし売上が10%減少して4,500万円になったらどうなるでしょうか?

変動費(原価)は売上に比例するので、10%減少し1,350万円になります。

粗利も売上に比例するので、10%減少し3,150万円になります。

ここまでは売上と同じ10%の減少です。しかし、固定費は売上が減っても変わりません。3,000万円のままです。

結果として、経常利益はいくらになるでしょう?

粗利3,150万円 - 固定費3,000万円 = 経常利益150万円

元の利益が500万円でしたから、150万円になったということは、利益はなんと70%も減少しています! 売上は10%しか減っていないのに、利益は7倍の割合で減ってしまったのです。

さらに、売上が20%減少して4,000万円になった場合も考えてみましょう。

変動費(原価)は20%減少し1,200万円。

粗利は20%減少し2,800万円。

 固定費は変わらず3,000万円。

結果、経常利益は 2,800万円 - 3,000万円 = △200万円。

売上が20%減っただけで、赤字になってしまうのです。

このように、固定費が存在することで、売上のわずかな減少が利益に壊滅的な影響を与える可能性があるのです。

◆ 売上増加の恩恵!利益はもっと増える!!

逆に、売上が増加した場合はどうでしょうか? もし売上が10%増加して5,500万円になったら?

変動費(原価)は10%増加し1,650万円。

 粗利も10%増加し3,850万円。

固定費は変わらず3,000万円。

結果として、経常利益はいくらになるでしょう?

粗利3,850万円 - 固定費3,000万円 = 経常利益850万円

元の利益が500万円でしたから、850万円になったということは、利益は1.7倍に増加しています! 売上は1.1倍になっただけなのに、利益は1.7倍です。

このように、固定費が一定であるために、売上が増加した際には、変動費以外の部分がすべて利益として積み増されるような形になり、利益が爆発的に増えるという現象が起こります。これは「レバレッジ効果」とも呼ばれます。

では、利益を2倍の1,000万円にするために、どれだけ売上を増やせばいいかという計算もしてみましょう。固定費3,000万円を賄い、かつ利益を1,000万円出すためには、粗利が合計4,000万円必要です。元の粗利率が70%でしたから、4,000万円 ÷ 70% = 約5,714万円の売上が必要となります。これは元の売上5,000万円から約14%増やすだけで達成できる数字です。

つまり、売上を約1.14倍にするだけで、利益は倍になる可能性があるのです!

◆ 変動費率(原価率)の重要性

この売上と利益の関係において、変動費率(売上に対する変動費の割合、ラーメン屋さんの例では原価率30%)も非常に重要です。

もし、ラーメン屋さんが材料を少し奮発して原価率が30%から40%に上がってしまったらどうなるでしょうか? この場合、粗利率は60%になります。
同じように利益1,000万円を目指すために必要な粗利4,000万円を達成するには、必要な売上は 4,000万円 ÷ 60% = 約6,667万円となります。

原価率が10%上がっただけで、同じ利益を出すために必要な売上が、約5,714万円から約6,667万円へと大きく跳ね上がってしまうのです。
利益の出ている企業は、この原価率などの変動費率がブレずに安定している傾向があります。逆に、利益が出にくい企業は、変動費率が月によってブレやすい傾向があります。

◆ 売上だけ見てない?粗利で会社規模を判断しよう

「年商(年間売上高)」だけで会社の規模を判断することの危険性もあります。
例えば、卸売業のように原価率が非常に高く(9割など)、粗利率が低い(1割など)ビジネスモデルの場合、大きな粗利を稼ぐためには、非常に大きな売上を上げる必要があります。例として、売上が3億5,000万円でも原価率9割の卸売業の会社の場合、粗利は3,500万円になります。

一方で、原価がないようなサービス業で粗利率が非常に高い(ほぼ100%に近い)ビジネスモデルの場合、同じ3,500万円の粗利を稼ぐのに必要な売上は、単純計算で3,500万円ということになります。

売上だけを見ると「3億5,000万円」と「3,500万円」で会社の規模が全く違うように見えますが、「粗利」という観点で見ると、同じ3,500万円を稼いでいるという意味では「同じ規模の会社」と捉えることができるのです。
つまり、「粗利」こそが、その会社の稼ぐ力や実質的な規模を比較する上でより重要な指標だと言えるでしょう。

◆ まとめ:自社の「変動費」と「固定費」を把握しよう

会社の費用は、売上に比例して動く「変動費」と、売上に関わらず一定の「固定費」に分けられます。

 この費用構造があるため、売上の増減は、利益にそれ以上の割合で影響します。これが「レバレッジ効果」です。売上が少し減るだけで利益が激減したり、少し増えるだけで利益が大きく増えたりします。目標利益を達成するために必要な売上は、変動費率(特に原価率)によって大きく変わるため、変動費率のコントロールも非常に重要です。

 会社の規模や稼ぐ力を判断するには、売上高だけでなく粗利(売上総利益)に注目することが有効です。

「うちの会社の変動費率はどれくらいだろう?」「固定費はいくらあるんだろう?」「目標利益達成にはあとどれだけ売上や粗利が必要なんだろう?」といった疑問をお持ちの方、ぜひ一度自社の数字を分析してみてください。

損益計算書を変動費と固定費に分解し、自社の状況を深く理解することで、より効果的な経営戦略を立て、会社の成長を加速させることができるはずです。

自社の費用分解やシミュレーションの方法、経営計画の策定などについて、さらに詳しく知りたい、税理士と一緒に考えていきたい、という方がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽に当事務所にご相談ください。

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