こんにちは!FLOW会計事務所の小菅です。
日々の業務の中で、「うちの会社、本当にこのままで大丈夫かな?」「売上は伸びているはずなのに、なぜか手元にお金が残らない…」といったお悩みを抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。
実は、日本経済を支える中小企業の多くが抱える根本的な課題は「経営がないこと」にあると指摘されています。本日は、中小企業が安定した成長を遂げるために、今すぐ見直すべき経営の「土台作り」「正しい指標」「競争戦略」の3つのポイントを、わかりやすく解説します。
1. 経営の土台を固める:計画とビジョン
会社経営は、地図を持たずに旅に出るようなものであってはなりません。まず取り組むべきは「事業計画書」の作成です。
多くの経営者様は「計画通りにいかないから意味がない」と考えがちですが、それは誤解です。計画通りに進まなかったとき、なぜ差が生じたのかを分析するためにこそ、計画は必要不可欠なのです。
計画を立てる際の最初のステップは、ビジョン(目的)を決めることです。何を成し遂げたいのか、どこを目指すのかという目的地を明確にすることで、それを実現するための「手段」(必要なものや人材)が見えてきます。
特に中小企業にとっては、経営者が「経営の家庭教師」のような役割を担うことで、会社全体の方向性が決まります。計画を作成することで、数値の実現可能性を検討したり、資金不足などの無理な点に事前に気づくことができるのも大きなメリットです。
2. 中小企業が見るべき「正しい指標」
世間には多くの経営分析指標がありますが、大企業向けや投資家向けの指標が、中小企業の実態を正確に表さないケースが多々あります。
例えば、「ROA(総資本経常利益率)」は資産に対する利益率を見る指標ですが、中小企業においては、利益の多くを生み出しているのは資産(在庫、売掛金、建物など)ではなく、費用(人件費、広告宣伝費など)役員報酬の額によって利益を簡単に操作できてしまうため、表面的な利益率に惑わされてはいけません。
中小企業がチェックすべき「正しい指標」は以下の通りです。
・営業利益率の推移
売上が伸びているにもかかわらず、営業利益率が下がっている状態は「黄色信号」です。コストの増加が売上増加を上回っている可能性があります。先行投資をする際も、利益率の維持または増加を目指し、回収とのバランスを意識することが重要です。
・現預金固定費比率
これは、手元の現預金が固定費の何ヶ月分あるかを示す指標です。言い換えれば、売上がゼロになっても何ヶ月耐えられるかという、会社の生存能力を示します。最低でも3ヶ月分、理想は6ヶ月分程度の現預金を保有することで、資金繰りに振り回されることなく、社長が「種まき」や「営業」といった将来的な業績向上につながる仕事に専念できる余裕が生まれます。
・経常利益と粗利益(変動利益)
大企業は営業利益に注目しがちですが、借入が多い中小企業においては、支払い利息(営業外費用)を含めた経常利益が、目標として重視されます。
また、中小企業は固定費の削減が難しい(特に人件費はむしろ増やすべき)ため、粗利益(売上から変動費を引いた利益)を増やすことこそが、会社を儲けさせる方法です。
3. 弱者のための「差別化戦略」
ほとんどの中小企業は弱者であり、弱者は大企業(強者)と同じ戦略をとっては勝ち残れません。
弱者がとるべきは、ランチェスター戦略に基づいた「差別化戦略」です。そのポイントは以下の5つです。
1. 極地戦(エリアを絞る): 全国を相手にするのではなく、特定の地域やニッチ市場に焦点を絞り、そこに資源を集中投下します。
2. 一騎打ち: 大規模なライバル全体と戦わず、1対1の勝負に持ち込める環境で戦います。
3. 接近戦(コミュニケーション): メールや電話だけでなく、直接会いに行くなど、顧客との距離を縮め、親密なコミュニケーションを図ります。大手には真似できない、ファン化を促す戦略です。
4. 一点集中主義: 総合的なサービスを目指さず、強みや得意な一点のみに特化して勝負をかけます。他の領域は捨てる勇気が必要です。
5. 陽動戦(奇襲): 大手が「採算が合わない」「非効率だ」と見逃しているようなニッチな領域や、常識外れの動き(こっそり始める)でニーズを拾い、競争を仕掛けます。
中小企業が、弱者としての自覚を持ち、この5つの戦略を組み合わせることで、強者に負けない競争力を築くことができます。
まとめ
中小企業が不安定な経営から脱却し、成長していくためには、まず経営計画で目的と道筋を明確にすることが第一歩です。そして、大企業向けの指標ではなく、現預金や経常利益といった会社の実態を表す指標に目を向け、さらに自社を「弱者」と認識した上で、ランチェスター戦略による差別化を図ることが成功への鍵となります。
私たちは、お客様がこれらの経営の基本を固め、目標を達成できるよう、専門的な知識をもってサポートいたします。お困りのことがあれば、ぜひ一度ご相談ください。