【少額な返還インボイスの交付義務の免除】
税理士法人FLOW会計事務所です。
インボイス発行事業者が国内で行った課税資産の譲渡等につき、返品や値引き、割戻しなどの売上げにかかる対価の返還等を行った場合には返還インボイスの交付義務がありますが、その金額が税込1万円未満である場合には、返還インボイスの交付義務が免除されるということは以前のブログでお伝えしました。
今回は売手が負担する振込手数料相当額の取扱いについて具体例をもとにご紹介していきたいと思います。返還インボイスの交付義務の有無は、売手が負担した振込手数料相当額を会計上・税務上どのように処理するかによって変わってきます。
[具体例]
10,000円の掛代金の決済につき振込手数料相当額220円を差し引いた9,780円を受取った。振込手数料相当額は1万円未満である。
①会計上は振込手数料相当額を売上値引として処理し、消費税法上は対価の返還等として取扱う場合
②会計上は振込手数料相当額を支払手数料として処理し、消費税法上は対価の返還等として取扱う場合
③会計上は振込手数料相当額を支払手数料として処理し、消費税法上は課税仕入れとして取扱う場合
①の場合
借方 | 貸方 | ||||
科目 | 金額 | 税区分 | 科目 | 金額 | 税区分 |
現 金 | 9,780 | 不課税 | 売掛金 | 10,000 | 不課税 |
売上値引 | 220 | 対価の返還等 |
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会計上、売上のマイナスとして処理し、消費税法上は売上げにかかる対価の返還等として処理しているので返還インボイスの交付義務は免除されます。
②の場合
借方 | 貸方 | ||||
科目 | 金額 | 税区分 | 科目 | 金額 | 税区分 |
現 金 | 9,780 | 不課税 | 売掛金 | 10,000 | 不課税 |
支払手数料 | 220 | 対価の返還等 |
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会計上振込手数料相当額は支払手数料として処理していますが、消費税法上は売上げにかかる対価の返還等として処理しているので返還インボイスの交付義務は免除されます。
③の場合
借方 | 貸方 | ||||
科目 | 金額 | 税区分 | 科目 | 金額 | 税区分 |
現 金 | 9,780 | 不課税 | 売掛金 | 10,000 | 不課税 |
支払手数料 | 220 | 課税仕入れ |
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消費税法上課税仕入れとして処理していますので、そもそも返還インボイスの交付義務はありません。ただし、仕入税額控除を行うためには買手が手数料を立替えたものと考えるため、売手は買手が金融機関から受領した振込にかかるインボイスと立替金精算書という二つの書類の交付を受けなければならず、実務上非常に手間がかかってしまいます。
個人的には、会計上は「支払手数料」として処理し、消費税法上は「売上にかかる対価の返還等」として処理する②の方法がしっくりきます。なお、「売上げにかかる対価の返還等」として処理する場合には、対価の返還等の元となった適用税率(判然としない場合には合理的に区分)によって処理する必要があります。
皆さんだったらどの方法を選択しますか?
以上、簡単ではありますが、少額な返還インボイスの交付義務の免除についてでした。
少しでも参考になれば幸いです!