【相続】預金の取り扱いに注意!

先日、国民的ドラマとなった『半沢直樹』が最終回をむかえました。多くの方が、ご覧になったのではないでしょうか。銀行を舞台とした悪徳政治家の不正を暴き立てるといった趣旨の内容が、大きな反響を呼んだのでしょう。

今日は、誰しもが一つは持っている銀行の預金口座。

その名義人が亡くなった場合の払い戻しについてお話します。

銀行は口座名義人の死亡を確認すると口座を凍結します。そうなると預金の引き出し、その他その口座を使った全ての取引が出来なくなりますが、死亡届を役所に出しても役所から金融機関に連絡されることはなく、その事によって口座は凍結されません。その為、故人の口座のキャッシュカードの暗証番号を知っていれば引き出しが出来ます。ただし、そうしてしまうと2つの問題が発生します。

【2つの問題】

①他の相続人との間でトラブルになる可能性

葬儀費用のための引き出しであっても、被相続人の預金口座は、遺産分割協議の対象なので他の相続人の同意を取付けることが重要です。誤解を招く預金の引出しは他の相続人とのトラブルを招きます。私用で使ったものではないことを証明できるように、必ず領収書を取っておきましょう。

②相続を単純承認したことになる

引き出した預金を仮に私用目的に使ってしまうと相続を単純承認(民法920条)したことになります。単純承認とみなされた場合には、正の遺産よりも負の遺産が多く相続放棄をしたいとしても認められなくなってしまいます。負の遺産(借金)を背負うことになってしまいますので、預金の払い戻が必要であっても、正規の相続手続きを経て行うようにするべきでしょう。

そうは言ってもなかなか分割協議が纏らないケースも多々あるでしょう。その場合は、2019年7月の民法改正によって、他の相続人の同意がなくても一定の上限額の範囲で仮払ができる制度が出来ましたので活用すれば良いでしょう。

【参考】仮払可能額(銀行ごと、1銀行あたり上限150万円)

◆相続開始時の預貯金債権の額(残高)×1/3×仮払を求める相続人の法定相続分

もちろん、仮払を受けた額は、遺産分割の際に相続分から差引かれます。

遺産が有ろうが無かろうが、誰もが経験する事でしょう!

ご参考までに!

2019年10月から相続税もイータックスの利用が可能になります。

2019年10月1日からイータックスを使って相続税の申告をすることが可能になりました。

また、将来的には遺産分割協議書などの添付書類についても、PDF等のデータで提出が可能になるということです。

その他、2019年分以降の申告については、小規模宅地等特例や、相続時精算課税制度を適用にした申告についても、イータックスでの申告が可能です。

ただし、非上場株式や農地など、納税猶予の申告についてはイータックスで申告することができないのでご注意ください。

イータックスで申告することで、相続人が複数いる場合や遠隔地にいる場合でも手続きをスムーズ化するだけでなく、データ管理の簡易化やペーパレス化が実現できます。

≪イータックスで対応可能な帳票の範囲≫

〇第1表

〇第1表(続)

〇第1表の付表2(還付される税額の受取場所)

〇第2表(相続税の相続の計算書)

〇第4表(相続税額の加算金の計算書)

〇第4表の2

〇第5表(配偶者の税額軽減額の計算書)

〇第6表(未成年者控除・障碍者控除額の計算書)

〇第7表

〇第8表

〇第9表(生命保険金などの明細書)

〇第10表(退職手当金などの明細書)

〇第11表(相続税がかかる財産の明細書)

〇第11表の2表

〇第11・11の2表の付表1

〇第11・11の2表の付表1(続)

〇第11・11の2表の付表1(別表)

〇第13表(債務及び葬式費用の明細書)

〇第14表

〇第15表(相続財産の種類別価額表)

〇第15表(続)

相続開始後に、ご遺族が行う必要がある手続きとは?

お通夜・お葬式・初七日以外について、注意すべき確認事項をご紹介します。

【各役所へ届出(亡くなった後7日以内)】

(市役所への提出)

・死亡届出の提出

・マイナンバーカードの返却

・国民健康保険の資格喪失届の提出、国民健康保険の葬祭費の支給手続きを行う。

・高額医療費の請求

・介護保険の資格喪失届の提出

(警察署への提出)

・運転免許証の返却

(年金事務所への提出)

・年金受給停止の手続き

・遺族年金の請求

【個人の有料サービスの停止】

スポーツクラブ、訪問介護、雑誌や定期購読、健康サプリメントの定期購入、旅行や趣味の有料会員サービスなど、故人の口座から自動引き落としになっているものをご確認ください。また、クレジットカード明細や銀行通帳、故人のメールでも、有料サービスに対する支払いの有無をご確認していただくことが必要です。

【相続放棄をするか否かの決定(3か月以内)】

故人が財産よりも借金を多く抱えていた場合には、相続の放棄を検討する必要がございます。また、故人が個人事業を営んでいた場合には、廃業届の提出、ご遺族が、個人の事業を引き継ぐ場合には、開業届や青色申告承認申請書を提出する必要があります。

【所得税の準確定申告(4カ月以内)】

故人が個人事業等を行っていた場合には、故人の確定申告をご遺族が行う必要があります。

【不動産・金融資産などの名義変更】

(名義変更が必要な主なもの)

・土地や建物などの不動産の名義変更・・法務局

・銀行通帳の解約や名義変更・・銀行

・自動車の名義変更・・陸運局

・自動車保険や火災保険の名義変更・・保険会社

・自動車税の納税者の名義変更・・都道府県税事務所

・証券口座の名義変更・・証券会社

・クレジットカードの解約・・クレジット会社

・携帯電話、固定電話、プロバイダーの名義変更・・各契約会社

・公共料金やNHKなどの名義変更・・各契約会社

【遺産分割協議の作成】

遺言書がない場合には、相続人間で、遺産の取り分を決定する必要があります。

【相続税の申告(10カ月以内)】

原則として相続が発生した日から10月以内に申告義務があります。

相続税の申告以外にも、色々と変更手続きを要することをご理解いただけたでしょうか?

ご不明な点がある場合には、いつでもお問い合わせください。

相続税に関する税務調査対策について

税務調査において、指摘されやすい財産(申告漏れがあった財産)とは、平成28年度の税務調査の状況で、第1位は、現金・預金(33.1%)、有価証券(16.5%)、土地(11.8%)家屋(1.7%)、その他(36.8%)となっています。

まず、税務調査までの流れを見てみますと、

①人が亡くなると死亡の事実を知った日から7日以内に「死亡届」を市区町村役場に提出しなければなりません。市区町村役場は、「死亡届」を受け取ると、固定資産課税明細書と共に税務署へ通知します。

②税務署は、ここで死亡を確認し、相続人の情報や不動産に関する情報、その他保険会社等から保険金の支払調書、配当金の支払調書、国外送金等調書などの法定調書や所得税の確定申告の履歴情報等を署内のネットワークから抽出し、相続税がかかるかどうかを選別します。

③税務署は、相続税申告書が提出されると、上記②に記載した情報と照合し、相続財産に申告漏れがないか

等を確認します。また、被相続人と、その家族全員分の金融機関等の取引を10年間分照会し、有価証券等にも漏れがないか調べます。

名義預金がある可能性もあるので、被相続人の口座だけでなく親族の口座も確認しており、銀行や証券会社から過去のデーターを取り寄せることが出来るため、不審な入出金がないかすべてチェックしています。

税務調査の際の質問等からその狙いを見てみますと

①被相続人の学歴・職歴・趣味・社会的地位等の質問から見たその狙いは

→職業等から見て所得がどの程度あり、所得に見合った申告か?

②過去の住所についての質問から見たその狙いは

→本籍地、過去の住所地等における不動産の所有事実の確認

③過去の不動産の売却についての質問から見たその狙いは

→譲渡代金の使途を追及し、申告漏れがないかの確認

④取引金融機関についての質問から見た狙いは

→申告漏れ金融機関の有無を確認

⑤過去における多額の金銭の入出金についての質問から見たその狙いは

→入金については資金源、出金については化体財産の申告漏れはないか?

⑥相続開始前後の入出金・毎月の家計費についての質問から見たその狙いは

→手持現金及び隠蔽財産の有無、日々の出金のうち他への財産の移動や漏れの確認

⑦相続人・家族の状況と相続人に名前を書いてもらう、通帳の印鑑の確認の狙いは

→家族の状況を確認し、名義預金の帰属の検討

⑧配偶者名義の預金や不動産についての質問から見たその狙いは

→配偶者に収入がない場合には、被相続人の財産ではないか

⑨被相続人の亡くなる前の状況についての質問から見たその狙いは

→亡くなる直前の養子縁組や財産の移動は有効か否かの確認

上記の質問の中でも、名義預金(配偶者や子・孫などの名義預金で、実際にはそれ以外の真の所有者がいる預金)手元現金(亡くなる直前に引き出されたお金)をきちんと申告に反映させているどうかが最も重要な税務調査のポイントの一つになると思われます。

相続財産のうち、金融資産が多い場合には、過去の履歴(贈与税申告の漏れ等)は、必ずチェックされます。

正しい相続税申告のためにも、生前贈与を検討されている方はご注意ください。

相続税の未成年者控除とは

未成年者控除とは、20歳未満の相続人に対して適用される制度であり、年齢に応じて一定額を相続税から控除することができる税額控除の1つになります。

未成年者控除の目的は、未成年者は成人になるまでは学費等の負担も大きいので、経済的な負担を軽減することが目的になっています。

【適用要件】

①相続または遺贈により財産を取得していること

②財産取得時において「日本国内」に住所があること

③財産取得時において「20歳未満」であること

④財産を取得した者が「法定相続人」であること

【控除額】

(20歳ー相続時の年齢)×10万円

*1年未満切捨て

【ケーススタディ】

17歳の国内に住む法定相続人が、被相続人より財産を相続した場合。

(20歳ー17歳)×10万円=30万円

30万円の未成年者控除を適用することができます。

【注意点】

①未成年者の相続税額≦未成年者控除額の場合

控除しきれない未成年者控除額については、控除しきれなかった未成年者控除額をその未成年者の扶養義務者の相続税から控除することになります。

②今回の相続以前に、未成年者控除を使ったことがある場合

控除額が制限されることがございます。

改正相続税法のポイント

1980年以降、相続に関する民法の規定は大きな見直しが行われてきませんでしたが、高齢化社会の状況を鑑みて、2018年に大幅改正、2019年1月から順次施行されています。

施行スケジュールとその概要は以下になります。

◇2018年7月

改正法が成立・公布

◇2019年1月

・自筆証書遺言のうち、財産目録がPCで作成可能に。

◇2019年7月

・一定の範囲額なら故人の預貯金を遺産分割協議前でも引き出せることが可能に。

・遺留分の支払い方法が金銭で解決が可能に。

・相続人以外の親族が故人の介護を行っていた場合、相続人に金銭請求が可能に。

・配偶者に贈与された自宅は遺産分割の対象外に。

・法定相続分を超える相続については、登記をしていないと第三者に対抗不可能に。

◇2020年4月

・配偶者居住権の新設

◇2020年7月

・自筆証書遺言が法務局で保管可能に。

砕いた表現でご案内させていただきますと、以上になります。

各変更点の詳細については、後ほど、ブログでもご案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。

遺言にはどんな種類があるのか?

遺言には3つの種類があります。

「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つです。

それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。

①「自筆証書遺言」

遺言者自身が、直筆で遺言書の全文、日付、署名、押印をすることで作成します。

メリット・・手軽に作成することができます。また、1人で作成が完結するので、遺言の内容を誰にも知られることなく作成できます。

デメリット・・書き方の方法(日付や署名押印など)に誤りがあると無効になります。また、遺産目録の部分はPCで作成可能ですが、それ以外は自筆で作成する必要があるため、作業負担が大きいです。また、1人で完結できるメリットがある一方、偽造リスクが高まります。自筆証書遺言を法務局で保管していれば良いですが、保管していなかった場合には、紛失・滅失のリスクがあります。

②「公正証書遺言」

遺言者が公証人の面前で遺言の内容を伝え、それに基づき公証人が作成する遺言です。

メリット・・公証人が作成してくれるので書式誤りによる無効を防ぐことができます。また、遺言の原本が公証役場で長期間保管されるため、相続人が公証役場で遺言の有無の確認をすることができます。紛失・滅失のリスクを排除できます。

デメリット・・公正証書の作成に費用が掛かります。また、作成が完了するまでに時間がかかります。

③「秘密証書遺言」

遺言の内容を秘密にしたまま、遺言の存在だけを証明してもらう遺言になります。

メリット・・公証人手数料が公正証書遺言よりも安価です。

デメリット・・遺言自体を公証役場で保管してもらうことができないので、紛失・滅失のリスクがあります。遺言の存在を明らかにするのみで、内容は公証人を含め誰も知ることができないので偽造のおそれもないとは言い切れません。

概要にはなりますが、上記がそれぞれのメリット・デメリットになります。

お勧めは、やはり「公正証書遺言」です。

費用的な負担はございますが、よりフェアな状況で、遺産を相続人に引き継がせるためにも、公正証書遺言をお勧めいたします。

相続が始まったら最初にするべきことは?

まずは、遺言の捜索をしてください。

遺言には、一般的に遺産分割方法の指定や、財産の分け方などが記載されています。

そして、遺言には、法律上の効果として、遺産の分け方を決定する力があります。

だれがどの財産を取得するかは、遺族にとって一番の関心ごとでもございますので、必ず捜索をしてください。

【遺言の捜索方法】

①自宅金庫や重要書類を保管されていた場所を確認してみましょう。

②①に無かった場合には、最寄りの公証役場で公正証書遺言が保管されていないかを検索してみましょう。

なお、2019年7月20日からは、自筆証書遺言についても、法務局で保管してもらうことが可能になるため、2019年7月20日以降に相続が生じた場合には、法務局でも自筆証書遺言が保管されていないかを検索してもらいましょう。

遺言が無かった場合や正しく遺言が作成されていなかった場合には、相続人間で遺産分割協議を行う必要がでてきますので、ご留意ください。

*用語説明

公正証書遺言とは・・被相続人が公証人の面前で遺言の内容を伝え、それに基づいて公証人が作成する遺言書

自筆証書遺言とは・・遺言者が直筆で遺言の全文を作成し、押印した遺言書

相続の放棄とは?

相続ではプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐこととなります。

そのため、被相続人(お亡くなりになられた方)が、プラスの財産以上に、マイナスの財産を所有していた場合には、相続人は、遺産相続によって損をする可能性がでてきます。

そこで、相続税法では、相続人が、遺産相続によって借金を背負わないよう、「相続の放棄」という制度を設けています。

しかし、相続の放棄には以下の注意が必要です。

・すべての相続財産を手放さなければならなくなる

・一度放棄した後のやり直しは不可

・放棄前に相続人が被相続人の財産を処分していた場合には放棄ができなくなる可能性アリ

・放棄した相続人の相続順位が変動してしまう

相続の放棄は、相続開始を知った日から3か月以内に放棄の手続きをしなければなりません。

そのため、放棄を検討している方は、相続財産の評価をできるだけ早く洗い出し、放棄を検討されている相続人以外の相続人との話し合い(分割協議書の作成など)が必要になります。

相続財産のうち、多額の借金が想定される場合には、お早めに動き出すことをおすすめいたします。

遺留分減殺請求とは?

相続に関する内容で、遺留分減殺請求というものがあります。

まずは、遺留分減殺請求について説明をする前に「遺留分」についてご説明いたします。

◇「遺留分」とは?

遺言書があった場合に、特定の人物のみ(以下「A」)に財産を引き渡す旨の記載があったとします。このAが、遺族であればまだしも、ご遺族ではなかった場合、ご遺族は愕然とされるのではないでしょうか?

こういったケースを想定して、法律では法定相続人の権利を保障しており、この権利を「遺留分」といいます。

法定相続人が、相続財産をまったく受け取れず、生活が困難になってしまうことを防ぐことを目的として、相続人に最低限の財産を確保する権利を法律では与えています。

遺留分は、以下になります。

・直系尊属のみが相続人の場合には、相続財産の3分の1

・上記以外の場合には、相続財産の2分の1

ただし、兄弟姉妹には、この権利はありません。

◇遺留分減殺請求とは?

遺留分減殺請求とは、遺留分の財産を取得する権利を侵害されている相続人が、遺留分を侵害している者(ここではA)に、侵害額を請求できる権利になります。

ただし、この遺留分減殺請求権は、相続開始及び減殺請求すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間という期限付きの権利になります。

遺留分については、請求をしなければ、そのまま受遺者や受贈者に財産が譲渡されることなります。

期限があるのでご注意ください。