【今年の生前贈与はお済みですか?】
こんにちは!FLOW会計事務所の森です。
今年の冬はスーパーエルニーニョが発生し、暖冬になるようですね。11月に入りましたが、いまだに半袖シャツにも出番があり衣替えが進まない今日この頃です。
さて、今日は施行日(令和6年1月1日)が直前に迫った相続税法(相続税・贈与税)の改正のうち、「相続時精算課税」についてご案内いたします。なお、「暦年課税(贈与)」の見直しについては、別のブログで紹介しておりますので、ご興味のある方はそちらもあわせてご覧ください!
暦年贈与が変わります! – 税理士法人FLOW会計事務所 (flow-kaikei.com)
まず、2種類の贈与について概要をまとめます。
「暦年課税」には受贈者(=贈与を受ける人)ごとに毎年110万円の基礎控除がある一方、最高税率は55%にもなる累進税率が採用されております。贈与額が大きくなるほど贈与税負担が重くのしかかり、どうしても少額の贈与を実行するケースが多くなります。
一方、「相続時精算課税」は、直系の親族間(親→子、祖父母→孫)でまとまった金額の贈与を行う際に贈与税負担を軽減させる効果があります。選択を行った時から贈与額を累積していきますが、2,500万円に達するまでは贈与税がかかりません。また、2,500万円を超えた場合でも、一律20%の贈与税負担です(相続時精算課税で3,000万円を贈与した場合、100万円の贈与税負担で済みます)。ただし、仮に累積額が2,500万円に届かなかった場合や、贈与から数十年経過後に相続が発生した場合でも、相続税を計算する際には必ず持ち戻しを行う(=加算する)必要があります。
そんな相続時精算課税ですが、今回改正されたのは次の2点です。(いずれも令和6年1月1日以降の贈与に適用されます)
①相続時精算課税に係る基礎控除(110万円)の創設
②相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例の創設
①により、毎年110万円までの部分は累積額に含めなくてもいいことになりました。贈与税も相続税もかからない部分が出現するという大きな改正です!
贈与財産は、贈与した時の課税価格をもって(=固定の金額で)相続財産に加算されていましたが、②の改正により、土地・建物が災害で一定以上の被害を受けた場合は、相続時に再計算する見直しを行うこととされました。
相続時精算課税を推進するために、使い勝手をよくした(=受贈者にメリットを作った)改正になりますね!ただし、以下のようなケースではデメリットになります。
Ⓐ相続までの期間に、不動産や有価証券の価値が大きく下落した場合(上記②以外の理由)
→贈与時の課税価格(現在価値よりもはるかに高い金額)に相続税が課税される
Ⓑ数年後に暦年課税の方が有利だと気が付いた場合
→本制度を一度選択してしまうと、その贈与者からの贈与に暦年課税が適用できない
Ⓒ受贈者が贈与者より先に死亡してしまった場合
→同じ贈与財産に対して、二度の相続税がかかる可能性がある
上げればまだまだありますが、代表的な例をご紹介しました。基本的には課税されるタイミングを将来(=相続時)に先送りしているため、実際の相続が発生するまでは本制度を適用してよかったかどうかの結論は出ないということになります。
1つ確実な点としては、今年いっぱい(令和5年12月31日まで)の贈与は従来のルールが運用されているということです。今年行った暦年贈与までは3年以上経過すれば将来の相続財産には加算されないことになります!改正後の相続時精算課税の適用をお考えの方、暦年贈与の加算期間が相続発生前7年に延長されることで悩んでおられる方もいらっしゃるかもしれませんが、まだ2か月弱期間が残っておりますので、年内の贈与の実行を前向きにご検討いただくこともよろしいかと思います。
今回の税制改正を受けて贈与の仕組みが複雑化し、暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かについても即答できなくなりました。将来「必ず」発生する相続のことをよく考えた上で、ご家族構成・財産状況等を総合的に判断し、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で実行に移していただくことが必要かと思います。贈与を実行する上で不安のある方は、ぜひ弊社までご相談ください!
最後までお読みいただきありがとうございます!